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メンター制度のメリットデメリット~人手不足解消の一手となるのか~

御社ではメンター制度は導入されていますか?使い古された感のある「メンター制度」ですが、今、この時代に改めて役に立つ施策だと思いますのでぜひご参考いただければと思います。

この記事でお伝えすること

メンター制度とは

厚生労働省によると「メンター制度とは、豊富な知識と職業経験を有した社内の先輩社員(メンター)が、後輩社員(メンティ)に対して行う個別支援活動です。キャリア形成上の課題解決を援助して個人の成長を支えるとともに、職場内での悩みや問題解決をサポートする役割を果たします。」とあります。

厚労省のこの記事では、女性活躍推進ポジティブアクションのひとつとしてメンター制度を取り上げています。今、深刻化する人材不足の環境下では、女性活躍だけでは人材不足を賄えないのが現状です。

日本総研のレポートによれば、「根強く残る固定的な性別役割意識や年功的な雇用慣行に本格的なメスを入れ、女性・シニアのコア人材化・戦略人材化を進める必要がある。それによる労働投入量増加と生産性上昇効果で、15%の人手不足緩和効果があると試算され、、」(出典:日本総研ビューポイント No.2023-012)とあります。この記事は大変読み応えのあるもので、デジタル化では人材不足はまかなえないことがわかる、さすがのレポートです。全文を掲載させていただきたいところですのでご関心があればぜひリンクからお読みください)

メンター制度の構造をわかりやすく

メンター制度の登場人物は主に2名です。

1人目は制度の名称にもなっているメンターです。

メンターとは、通常経験のある社員がアサインされます。主な役割は①メンティー(後述)の話を聞く事②メンティーの相談に乗ること③対話を通じてメンティーと信頼関係を構築しメンタル的に支援を行う この3つです。

もう一人がメンティーです。

メンティーとは、育成される社員本人です。対象となるのは会社によりますが、スキルアップを望まれる次世代の核人材と期待されている若手です。1年目の新人には全てメンターを付けるなど、どのように設計するのか、それがメンター制度の肝です。

望ましくは、メンターとメンティーのコミュニケーションを把握するために総務人事部のメンター制度取りまとめ担当が欲しいところです。どうして必要なのかは後述します。

 

メンター制度のメリット

メンター制度はメリットがたくさんあります。が、ただメンターとメンティーをセットすればいいと簡単にエイやでやってしまうと上手くいかず、立ち消えになってしまいます。図のように組織内へのメリットが大きく、十分時間をかけて設計するに値する施策です。

 

注目していただきたいのはは最上部の「メンターの人材育成意識が向上」と上から6番目にある「部門や職種をまたがるコミュニケーションの活性化」です。メンター制度を導入することでメンティーである新人や若手のサポートができるだけでなく、相手であるメンター自身の成長にも役立ち部門間に横串を刺すコミュニケーションが促進されるという副次的な効果が期待できるという事がアンケートから読み取れます。

これらのことからも、メンター制度導入は組織に大きなメリットのある施策と言えます。

 

メンター制度のデメリット

メンター制度のデメリットとしては、メンティ側(若手)とメンター側(先輩、上司)で分けて考えることができます。

<メンティ側のデメリット>
・直属の上司とメンターの2人上司と感じてしまい、違うアドバイスを受けるなど混乱してしまい気遣いなどストレスを抱えてしまう
・メンターが性格的に合わないタイプの場合、そもそも関係性を持つことにモチベーションが下がり、ストレスになってしまう。
・新人の場合、メンター制度と業務の区別ができず、どこに何を相談したらいいかと混乱してしまう。

<メンター側のデメリット>
・業務に加えてメンティーとの時間を持たなくてはならなくなり、時間的に工面するのが難しい
・人事制度の評価等にきちんと反映されているか不満を感じてしまいがち
・業務上、直属の部下や後輩指導もあるため業務負担が大きくなってしまう

上記のようなデメリットはあるものの、先述の通り組織全体で考えればメリットは大きいのでデメリットを認識し、適切に組織的なサポートあればデメリットをコントロールしつつ運営することが可能です。

メンター制度を適切に実施するために必要な事

メンター制度にはメリットもデメリットもあります。どのような施策でも言えることですが、当人任せにするのは失敗の元です。組織的に導入するのであれば組織的にサポートすることが必要です。例えば以下のようなサポート体制が役に立ちます。

人事部主導で全体設計を行う。(例:期間、人選、マッチング、定例報告会の実施、相談窓口の設置)

・メンター制度導入の社内アナウンスで目的や効果、想定される事例などを全社共有する。

メンター、メンティ当事者双方へ心構えやメリットを理解してもらう。良好な関係性を構築するのに役立つコミュニケーション手法などを研修などでスキルアップの機会を持つ。

メンター制度導入企業事例

H社・・・新入社員は全員メンティとしてアサイン。2年目と3年目の有望な社員をそれぞれメンターとして人事部がマッチング。マッチングは事務系と現場系のクロスマッチング。人事部はメンター制度の事務局として取りまとめや相談窓口の役割を担う。メンターは指名されれば「有望視されている」という期待感を感じることができるためモチベーションが上がる。2年目3年目はまだ業務量もそれほど多くなく負担が少ない、新入社員と年齢も近く話しやすく部署の違う意見が聞ける「頼りになる先輩」として新入社員の安心感をサポートできている。お互いが部署が違うため業務上も割り切りができていて良い刺激を与えあっている好例。

G社・・・2年目社員をメンティ、4〜6年目の社員をメンターとしてアサイン。メンター役の社員は役職登用前で部下指導の経験をする前段階としてのメンター制度の活用。4〜6年目は階層別研修も無く、研修機会の少ない年次。メンターとして参加することで自己成長の機会となっている。課題はメンターによってメンティの成長に差が出ている事。メンターにメンター研修を実施し、メンターによるバラツキを軽減するようにしている。

まとめ

これまでお伝えしたように、メンター制度はメンターメンティ双方の成長に寄与し、部門をまたがってマッチングすることで組織内コミュニケーションも活性化するというメリットの大きい施策です。

早期離職率3割の状況が継続する中、採用した新人若手の退職を防止するだけでなく、女性やシニア活用にも設計の仕方によって大きく効果が見込めます。

転職サイトの大手エン・ジャパンのアンケートによれば、離職理由は色々あれど会社に伝えていない本音の理由は人間関係がトップになっています。メンター制度を適切に運用できていれば、社内のだれにも相談せず、ある日突然上司に退職届を出す「サイレント退職」も防止できるのではないでしょうか。

 

メンター制度を適切に設計し、運用することで社内の風通しを良くし、離職者を軽減し、若手や女性、シニアにも活躍してもらうことは可能です。そしてそれは多様な人材の活用に繋がり組織の活性化や更なる発展に効果が期待できます。御社でも、是非!

 

メンター制度についてのご相談はお気軽にご連絡ください。教育総研では設計から運用、各種サポートを承ります。ヒアリングはオンライン対応、無料です。ヒアリング後に改めてご提案させていただきます。

教育総研は御社の人材育成を伴走支援致します。小さなことでもご相談ください。

 

 

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