「人材育成担当になったけどどうしたらいいのかな」
「前年までと同じ年間計画立てとけばいいか、、(いいのかな?)」
「ここ数年、今まで実施してきた社内人材育成が機能してないような気がするからテコ入れしたい」
年度末が近づくと来年度の予算計画を立てなければならないので変更するのは大変ですが、これから来年度の人材育成を計画される社員教育担当の方々必見の内容をお届けします。
目次
そもそも人材育成のあるべき姿とは
「企業は人なり」使い古された言葉ではありますが、やはり真理です。企業は社員がいて初めて事業活動ができます。その活動の先の成否は社員の方々の能力がものを言います。それぞれの役職、部門、業務内容などで必要なスキルは違ってきます。年代によっても違います。が、一つ言えることは「組織の方向性に合った人材育成が必要である」ということです。
つまり、組織がどう動こうとしているのか、それを実現させるために社員にどのようなスキルが必要なのか、組織の方向性に紐づけて人材育成を行うことが重要だということになります。
例えば単純な例であれば、海外に進出するぞ!となった場合、海外対応人材が必要になります。グローバル人材を採用するのか、在社員に英会話や外国語など進出先の言語を習得させることなどがそれにあたります。
これからの人事は戦略的思考が益々重要になってきます。人材育成については経営層と二人三脚で進めていきたいものです。育成は一朝一夕にできません。組織の戦略と連携を取り、採用計画とリンクさせながら中長期で計画して行きましょう。
一般的な人材育成の構図
一般的には下図のような研修イメージとなります。大きくは年代で区切った「階層別研修」と緩やかに区分けして必要なものを選ぶ「スキル別研修(カフェテリアなど、呼称は様々あります)」の2種類があると考えるのがシンプルです。
サンプルケースの考え方<5ヵ年計画の場合>
例えば、今から5ヵ年の人材育成計画を作ってみるとします。上述のような研修を全部実施するというのは費用面からも社内調整の点からも少々難しい、、というケースがほとんどではないでしょうか。その場合、どこから手をつけるか、重点階層を決めましょう。
今回は社内人材の課題として「若手社員の離職」があるとします。今だに若年層の3年離職率は高止まりしていますし、これから戦力化していく若手層の転職を防止したいと考える企業は多いのではないでしょうか。組織のエンジンである中堅層も若手の部下が能力を上げれば負担が軽減されてストレスが少なくなると考えられます。今の若手は上昇志向(偉くなりたいのではなく、自分の能力を高めたい方です)や承認欲求が高く、社内教育の充実は転職理由にもよく見られる項目ですので若手から始めるのは人材流出防止にも有効です。
ケース:A社
「ある地方の中小企業の堅実なメーカー。社員数約200名。今まできちんとした社内育成計画が無く、新人研修は必ず実施するもその他の研修はなんとなく実施してきた。最近中核層が転職や親の介護で退職することが気になっている。新人採用も上手くいかず、ジリジリと社員数が減少していくことに危機感を感じている。若手の離職率もここ数年高止まりしていて部署内に空白の年代ができるなど、人事面での課題がある。「地元の働きやすい会社」として企業としての魅力を打ち出していきたいのでその一環として人材育成をテコ入れすることにした。」
では以下からサンプル5ヵ年計画をご覧ください。
サンプルケース<5ヵ年計画1年目>
緑色が実施研修です。まず初年度はコスト的にも社内調整的にも無理のない範囲で行ってみます。ポイントは以下の通りです。
☑️4〜6年目は人によって成長にばらつきが出る年次。階層別で同じあたりの年次を集めて気づきを促したり相互学習を行うことで伸び悩みへの突破口としていただけます。
☑️できる人とできない人が大きく差が出るPDCAやコーチングで改めて基礎力を高める機会を提供します。
☑️新人研修は新人の人数が少ないと配属先任せになることも多いものです。導入研修はプロに任せた方が現場の労力も温存できてお勧めです。
サンプルケース<5ヵ年計画2年目>
2年目は少しメニューを増やします。特に若年層をしっかりと育成する目的で上位年次のメニューを選出しました。ポイントは以下の通りです。
☑️階層別の実施年次と種類を拡大し、社内に「社員教育」の風土を根付かせます。
☑️若年層の教育を充実させることで、成長実感や社内の期待感を感じていただきます。メニューは成長の土台となる基本スキルを中心にしました。教育の充実は業務遂行にも好影響を与えますし、承認欲求や向上心も満たすことができます。
☑️上位年次の負担を軽減するために若年層にフォロワーシップスキルを学ぶ機会を提供します。フォロワーシップを学ぶことでリーダーシップへの理解も生まれ、組織の一員としてどうあるべきかを学ぶことができます。
サンプルケース<5ヵ年計画3年目>
3年目はいよいよ上位層に研修を拡大します。この2年で社内に「研修は当たり前」の風土が生まれました。若手は知識を付け、やる気を見せつつありますので、この辺りで上位層にも学びを得ていただき、新しい知識を得る機会を提供し、上からと下から組織内の意識変革を支援します。ポイントは以下の通りです。
☑️若年層、若手の研修は階層別で継続的に学びの機会を提供する。
☑️組織力を向上させ、リーダーシップを発揮してもらうために改めて上位層にリーダーシップ強化や事業活性化につながる学びの機会を提供する。
☑️しっかりと学ぶ機会を得てきた若手のやる気を支援するために管理職層にも学びの機会を提供する。
サンプルケース<5ヵ年計画4年目>
3年かけて社内に研修を根付かせてきました。社内の力を整えてきたところで4年目は事業の活性化を図ります。事業を創り出していくのは上位層の役目。高まった組織力をどう活かすのか、上位層に力を十二分に発揮していただくための支援を行います。ポイントは以下の通りです。
☑️若年層、若手社員の離職を防ぐためにも継続して学びの機会を提供します。特に、思考力を鍛えるメニューを充実させます。
☑️上位層が安心してリーダーシップを発揮するために実務の中核を担う中堅層に学びの機会を提供します。
☑️新しいことにチャレンジしていかなければ事業の発展は望めません。管理職、経営層にこれからの事業創出に役立つ学びを得ていただきます。
サンプルケース<5ヵ年計画5年目>
いよいよ5ヵ年計画最終年度です。全体的にバランス良く研修を実施します。社内研修を取り入れて5年経っているので社内では「学び」が当たり前になり、研修で勉強した言葉が共通言語となり、社内ミーティングも有意義な時間になってきています。「学び合う組織」「新規事業による更なる発展」をキーワードに研修を実施します。ポイントは以下の通りです。
☑️若年層、若手の研修は恒例行事として実施します。定期的に実施するので、若手のコミュニティづくりの場としても役立てていただきます。
☑️中堅層には組織を引っ張る将来の幹部候補生としての機会を提供します。目標を持っていただくことで業務遂行モチベーション、会社へのロイヤリティ醸成にも好影響が期待できます。
☑️会社の魅力を作り出す経営幹部層にチャレンジングスピリッツを奮い起こしていただくような研修機会を提供します。企業のトップがイキイキと未来を語ることで社内活性化が期待できます。
まとめ
サンプルケース5ヵ年計画はいかがでしたでしょうか。実際は一旦5年程度プランして、毎年度見直しを行いつつ、社内の声に耳を傾け、環境変化に合わせて修正していくことが現実的です。重要なことは「学びつづける組織」を創ることです。学ぶ組織は強いです。
仕事に関する名言に「何をするかではなく、誰とするかだ」というものがあります。仕事には不平不満がつきものです。給与など待遇を上げるといってもキリがありません。一緒に働く仲間は「プライスレス」です。その仲間づくりを助けるのが人事の役割だと思います。学びはスキル向上だけでなく人の意識を向上させます。良い組織創りのための研修計画、頑張ってください!
教育総研では各企業のご要望、状態をヒアリングさせていただき人材育成計画づくりもお手伝いします。ご相談は何度でも無料です。
グループ会社に人事コンサルティングの(株)アンド・リスペクトもございますので人事全般の課題をご相談いただけます。
みなさまからのご相談をお待ちしております。